伊坂さんらしいユーモアと皮肉に溢れた短編集で、面白さも然ることながら、人としての筋を一本通しているところにも納得の素晴らしい一冊だった。表題作を始めとする各作品のタイトルもよく考えられていて、最後まで読むとこの五編がただ…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
伊坂さんらしいユーモアと皮肉に溢れた短編集で、面白さも然ることながら、人としての筋を一本通しているところにも納得の素晴らしい一冊だった。表題作を始めとする各作品のタイトルもよく考えられていて、最後まで読むとこの五編がただ…
警察学校は生半可な気持ちでは卒業できない。しかし、実際の現場に出てから命を削って仕事をしなければならない彼らにとって、ここでの学びは覚悟を決めるための時間でもあるのかもしれない。 警察官になろうとする一人ひとりにドラマが…
ロードレースについては薄い知識しかなく、きちんと見たこともなかった。それでもこの作品の圧倒的な臨場感に浸った。 オリンピックも狙えると言われた陸上選手は十八歳でロードレースに転向し、社会人となってからはプロのチームに所属…
羊毛を織って作るホームスパンは、様々な色に染め毛をより合わせて糸をつくることで、様々な色合いを生み出すことが出来る。それはまるでたくさんの人が互いに繋がって美しいハーモニーを奏でるかのようである。 学校に行けなくなった高…
1996年、新宿ゴールデン街でバー「エル・ビエント」を経営する織部まさるは、クラシックギタリストのファラオナが弾くギターをきっかけに、スペインの田舎町・パロマレスへ向かうことになる。彼女が持っていたギターには、彼の店名と…
硬派な青春小説というと、男くさい世界をイメージするかもしれないが、この作品はまさに硬派そのものである。前作「武士道シックスティーン」で高校一年生だった香織と早苗は二年生となるが、早苗は転校してそれぞれ別な場所で剣道を続け…
作家の想像力は凄まじい。 同時代を生きた三人──俵屋宗達、原マルティノ、そしてカラヴァッジョ。彼らが出会った記録はないが、出会わなかったという証拠もない。そして、想像は自由である。 天正遣欧使節としてローマを訪れた人物の…
東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年、南千住で発生した強盗殺人事件、さらには浅草で発生した男児誘拐事件が発生する。容疑者は、北海道の礼文島から逃げてきた男・宇野寛治。それを追う若手刑事・落合昌夫。それぞれの視点から、…
第二次世界大戦下、アウシュヴィッツ強制収容所に両親らと共に収容された主人公ディタ。そこには、密かに学校が開かれ、彼女は図書係として8冊の本を管理することになった。 過酷な収容所の環境は、人々から命だけでなく、希望を奪って…
平成が始まるときに生まれ、平成の終わりまで生きた、ブルー呼ばれた男がいた。彼の人生は、平成という時代に日本社会が抱えた問題を、罪という形で背負っているようだった。人の人生を、辛かったとか、不幸だったと他人が評することはで…