平安の世に生きた在原業平という人物が見事に浮かび上がる作品。伊勢物語は平安時代につくられた貴族の男性を主人公とした歌物語集だが、この恋多き主人公は業平をモデルとしているとも言われている。小説伊勢物語の中で、業平や女性たち…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
平安の世に生きた在原業平という人物が見事に浮かび上がる作品。伊勢物語は平安時代につくられた貴族の男性を主人公とした歌物語集だが、この恋多き主人公は業平をモデルとしているとも言われている。小説伊勢物語の中で、業平や女性たち…
幸せになるにはどうしたらいいのだろう──正解のない問いをついしてしまう。そもそも幸せって何だろうと考えてみる。明確に答えられないことに焦る。そして、幸せそうな他人を羨み、そんな自分に嫌悪する。 親を理由に仕事を辞めたこと…
五編の短編はどれも切ないが、決して後味は悪くない。それぞれの主人公が切なさを乗り越えて、あるいは切なさを抱いたままでも、前に踏み出していく瞬間が描かれているからである。 最期に収録された表題作は、主人公の喪失感や心の痛み…
生きていく中で、あのときもし違った選択をしていたら、と思うことはたくさんある。それは今が幸せだったとしても考えてしまうことだ。この物語の登場人物たちのように、重要な決断をする瞬間の痛みがあったり、知らなかった事実を知って…
恋愛小説という先入観から読み始めた小説だったが、その期待は良い意味で裏切られた。二組の男女が温泉宿で過ごす一夜が、それぞれの視点から淡々と語られていくのだが、お互いの思いのすれ違いがなんとなく鬱々とした空気を感じさせる。…
狂おしいような恋愛ではない。しかし、こんな恋もいいじゃないと思えるようなシチュエーションの恋愛短編集。齢をとってみれば他愛のないような恋愛が、三浦しをんのペンを通すとこんなにも美しく七色に輝いて見えるのが不思議だ。 個人…
人を愛するということは罪なことだろうか。愛するからこそ別れ、別れるからこそ愛し続けられるということがあるだろうか。過去は変えられるという意味が深く、感動のラストへ繋がる展開も素晴らしい。著者の美しい文体と併せて読んでよか…
中年になり、一人になって感じる心の隙間。相手に惹かれるのは、純粋な恋愛感情なのか、あるいは隙間を埋めるための代用なのか。二人で未来を生きたいと願う男と、今を生きようとする女の小さなすれ違いが切ないが、日々を懸命に生きる喜…
泣ける小説ということでご紹介いただいた一冊。あっというまに老いを迎える難病を発症した彼女と、カメラマンを目指している主人公の物語。主人公の鈍感さにバカヤローと思いながらも、わかっているけど泣けるパターンで(涙)、あっとい…
「右岸」(辻仁成著)と対をなす一作。 左岸は女の視点から描いた物語で、右岸の主人公との恋愛を超えた関係性を描いている。どちらを先に読んでもいいとのことだったが、 個人的には 右岸を読んでからの左岸が正解だと思った。ただ、…