月を題材とした世界観の作品3篇。当たり前だと思っていた日常が崩れていくとき、人はそのことをどう受け入れていくのだろう。生きていかねばならないという前提があるとすれば、たとえ理解できないことが起こったとしても、どこかで折り…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
月を題材とした世界観の作品3篇。当たり前だと思っていた日常が崩れていくとき、人はそのことをどう受け入れていくのだろう。生きていかねばならないという前提があるとすれば、たとえ理解できないことが起こったとしても、どこかで折り…
人にはない力を母から受け継いだ小夜は、あるとき犬に追われる子狐を助けた。その狐はこの世と神の世の境に棲む野火という名の霊狐であった。また、小夜は、森陰屋敷という大きな屋敷から出ることを許されない少年と出会い、心を通わせる…
未来の人間社会──物理的な意味での不老長寿を手に入れた人間だが、社会は成熟するよりもむしろ荒廃し、人の心は成長しないまま、よりエゴが露出した社会となっていた。犯罪者とその子孫たちを隔離し、それ以外の場所で理想的な社会を作…
表題作を含む8本の短編は、現代社会の問題を反映したファンタジー作品で、一編読み終えるごとにチクチクと見えない棘が刺さっていくような感覚があった。 家族の在り方を問う「母の法律」、監視社会をシニカルに描いた「戦闘員」、タイ…
物語とは何だろうか。それを記した本とは何だろうか。読長町という町にある御倉家の書庫にはたくさんの本があるのだが、その本には盗まれないように呪いがかけられているという。 その謎は本の中にあり、物語の中に物語がある。どこから…
コロナ禍の状況をファンタジーに置き換えたカエルたちの物語。我が国が抱える問題をわかりやすくシンプルに描くと、きっとこんな世界観なのだろう。大変だ、大変だと騒いで、必死に対応しているように見えるが、客観的に見ればお笑いかと…
冒頭から巨大なザリガニの群れが横須賀に襲来する。これはとんでもない本を読み始めてしまったと思ったが、読み進むうちに不安は期待に変わり、主人公らの魅力に引き込まれた。 停泊する潜水艦に逃げ込んだ自衛官の夏木と冬原、そして子…
シリーズ第四弾は、バルサではなく新ヨゴ皇国皇太子チャグムが活躍する。隣国サンガルでの新王即位儀礼を舞台に、大きな事件が発生し、そこに巻き込まれていくチャグム……というより自ら巻き込まれていくという方が正しいだろう。 人の…
この本の読後感を一言で表現するのはとても難しい。研究好きの主人公アオヤマ君なら、的確な表現を見つけてくれるかもしれない。 ある日、突然現れたペンギンたちの謎、そしてお姉さんの謎を研究していく主人公は、理屈っぽくて理性的な…
翠(すい)という国では、鳳穐(ほうしゅう)と旺厦(おうか)という二つの氏族が互いに覇権を争っていた。元を辿ればどちらも同じ血筋であるが、いまや互いに恨み合い、血で血を争っていた。そんな中、それぞれの王が、争うことを止める…