公平な社会なんてありえない。しかし、存在が比較対象になるならまだましかもしれない。そこにいながら、いないことにされている者が少なからずいることの現実(リアル)。
アル中の母親と暮らす14歳の少女ミアと弟のチャーリーにとって、生きることを許された社会はとても狭いものだ。外から見れば、もっと広い世界がある、ほかに選択肢があるのだと思っても、それを彼らがどうして知るすべがあるのだろう。結局、人は自分が想像できる範囲のことしか社会として認識できない。それは、私たち自身が彼らの存在を認識できないということとイコールである。
この物語にはわずかでも救いがある。きっと著者がこれをドキュメントとしては描けなかったというのは、現実はこの何倍も厳しいということなのだろう。そして救いのないことが多いのだろう。
私と私以外の存在の違いとは何だろうか。人は、私以外の存在を想像することができるはずだが、同時にそれを考えずに生きていくこともできるのだ。他人にも人の心があることを忘れないようにしたい。それが自分の心を大切にすることにも繋がる。声なき声を聴こうとすれば、銃口を突き付けられることもある。その覚悟があるかを問われた気がした。
個人的おすすめ度 4.0