千駄木の付近に流れていた心川(うらかわ)。その周囲に人々が住み着いて町となった心町(うらまち)。裏町を心町とするところが人情味のある場所を表している。人には言えない事情があってここに住むようになった人たちは、互いに適度な…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
千駄木の付近に流れていた心川(うらかわ)。その周囲に人々が住み着いて町となった心町(うらまち)。裏町を心町とするところが人情味のある場所を表している。人には言えない事情があってここに住むようになった人たちは、互いに適度な…
農林水産省を追われて証券関連の仕事をしていた古葉慶太は、1996年12月のある日、香港在住のイタリア人富豪から、断ることのできない依頼を受ける。古葉は、そのミッションを遂行するため香港へと渡るが、やがてそれが世界を巻き込…
鰻が食べたい──読み終えた第一声はそれだった。 鰻屋「まつむら」へやってくる女子たちの物語だが、5つの物語の中には常に典型的なダメ男の権藤祐一が出てくる。祐一と長く同棲している笑子、学生時代に祐一に告白して拒否された加寿…
福島県気仙沼の海岸で女性の遺体が発見された。女性が所有していた身分証明書には笘篠とあった。五年前に東日本大震災で津波にさらわれた笘篠の妻の名前である。刑事の笘篠は現地へ向かうが、そこで見たのは妻とは別人の遺体だった。 笘…
上野恩賜公園で生活するホームレスの高齢男性。福島県の相馬で昭和天皇と同じ日に生まれた彼は、家族のために出稼ぎで各地を転々とする。戦争を経験し、高度経済成長期を経て、日本の成長を支えた彼が行きついた先は上野だった。 故郷は…
美術館のある絵の前でクライマックスを迎える六編の物語。寂しい時、後悔した時、人生に行き詰まった時、絵は無言で語りかけてくる。そこで過去を顧みながら、新しい一歩を踏み出していく。 美術館に行って感動する作品に出会えることが…
杉並の古い洋館に暮らす四人の女たち。家主の牧田鶴代と、その娘で刺繍作家の佐知。偶然に出会いから佐知と友達になった同年代の雪乃、そして雪乃の会社の後輩である多恵美。さらにすぐ近くに暮らす老人・山田。 個性的な面々が織りなす…
レイアは閉ざされた世界で生きていた。唯一、頼ることができるのは父王だけだが、光が見えなくても、心を覆うのは暗闇ではない。しかし、平穏な日々は永遠ではなかった。 この物語において、闇と表現されるものは、物理的な光だけではな…
結婚詐欺の容疑で逮捕された女の周辺で、複数の男が不審死していた。フリーライターの今林由美は、報道されている事件に違和感を感じ、容疑者の本当の姿に迫ろうとする。そこには、三十年前の北陸で、少女が置かれた過酷な環境があった。…
茨城県の牛久沼には河童伝説がある。その地で、河童が人を殺したという通報が入る。発見された男の体は、何か大きな力で体を引きちぎられた無残な姿であった。犯人像が定まらないまま迷走する事件は第二の被害者が発見される。 この物語…