痛みを伴う読書というのはこういうものかと思う。元夫の暴力から逃れ、自分を捨てた母と再開を果たした主人公。そこにあったのは、理想の出会いとはかけ離れた現実だった。共に暮らすようになった人たちは、誰もが深い痛みを抱えて生きて…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
痛みを伴う読書というのはこういうものかと思う。元夫の暴力から逃れ、自分を捨てた母と再開を果たした主人公。そこにあったのは、理想の出会いとはかけ離れた現実だった。共に暮らすようになった人たちは、誰もが深い痛みを抱えて生きて…
大学生の就職活動というのは、一歩引いたところから見るとまるで非日常のように見える。企業と大学の騙しあいのようでもあり、裏側から見れば人間の嫌な面ばかりが見えてしまう。物語は某企業の最終面接に進んだ六人が、グループディスカ…
月を題材とした世界観の作品3篇。当たり前だと思っていた日常が崩れていくとき、人はそのことをどう受け入れていくのだろう。生きていかねばならないという前提があるとすれば、たとえ理解できないことが起こったとしても、どこかで折り…
メッセンジャーの仕事をしている男の心の内を刻々と綴る前半、そして突如シーンが変わってそこに至る過程と気づきが描かれる後半。どことなくニヒルな雰囲気もある主人公だが、その内にある抑えようのない衝動が彼の人生を導いていく。社…
一つの作品が生まれ、人々の目に触れながら、絵もまた人々の変遷を見守っているかのようだ。一枚の絵に連なる人たちの変遷に胸が熱くなった。流れる涙は温かいもので、人を信じたいという気持ちにさせてくれる一冊だった。 オーストラリ…
正しい欲求とは何だろうか。異性を見て性的興奮を覚えることは正しい性欲なのだろうか。食欲は、睡眠欲は、正しい欲求なのだろうか。誰がそれを何のために規定するのだろうか。自分がマジョリティに属していると思う人間が、そうでない人…
「俺」がその一言を云えるようになるまでに、どれほどたくさんの時間を費やしてきたのだろう。誰にも気づかれない孤独の中で、真っ黒な胸の内を隠して、自分ではない何かを演じて生きていく人生の辛さよ。血を流しながら、死ぬこともでき…
戦国時代、石垣施工の技能集団・穴太衆。その中でも、石垣を築く技術を持った天才を人は塞王と呼んだ。穴太衆の若きリーダーとなった匡介は、絶対に破られない石垣を造れば、戦国の世を終わらせることができると考えていた。 一方、鉄砲…
第二次世界大戦で女性を兵士として戦場に送ったソ連。女性として、ロシア人として、人として、何のために戦うのか、そして戦った後に何があるのか、いくつもの問いかけが弾丸のような速さで戦場を駆け抜けていく。圧倒的な臨場感、そして…
学生時代に友情をはぐくんだ男女四人は社会人になり、それぞれが壁にぶつかっていた。そんなときに、仲間のある事柄をきっかけに再会することになった彼らは、自分自身のことに精一杯になりながらも、互いを思いやり、そして互いを必要と…