ユダヤ人迫害が激しさを増す戦争の時代、ひとつの小さな命を守るために、両親はその命を投げ捨てるかのように他人に託した。その命を拾い受けた木こりの夫婦は、天傘の授かりものとしてその子を大切に育てるのだが、そのためには犠牲が伴…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
ユダヤ人迫害が激しさを増す戦争の時代、ひとつの小さな命を守るために、両親はその命を投げ捨てるかのように他人に託した。その命を拾い受けた木こりの夫婦は、天傘の授かりものとしてその子を大切に育てるのだが、そのためには犠牲が伴…
冷戦の時代、米国のCIAがソビエト連邦に立ち向かうために武器としたものに文学があった。ボリス・パステルナークの小説「ドクトル・ジバゴ」は、ロシア革命を批判しているとして言論統制化のソ連では出版されなかった。そこでCIAは…
ルシア・ベルリンの小説は、いずれも著者の人生の一部を切り取って脚色した作品だという。本書に収録された二十四編の短編は、それぞれの楽しみもあるが、読むほどに著者や家族、出会った人々などがリアルに感じられるような気がする。ア…
これほど精巧に組み立てられたミステリーにはなかなか出会えない。様々な伏線がしっかり回収されていく王道の構成であり、かつ、二重構造の物語となっていて、一つの作品で二度楽しめるという構造になっている。 名探偵アティカス・ピュ…
ノース・カロライナ州の湿地で孤独に生きている女性カイア。経済的に厳しい環境下ではあっても、逞しく生きている彼女が見る湿地は、生命のエネルギーに溢れていた。しかし、湿地の少女と蔑まれた彼女は、この地で1969年に起こった殺…
アーモンドと呼ばれる脳の偏桃体が先天的に小さいために、感情をあまり持つことができない主人公は、まるで自分と正反対に感情を剥き出しにする少年と出会う。他人の気持ちを理解しようとするとき、共感を感じたり、反感を感じたりするの…
SF作品に贈られるヒューゴー賞をはじめ、数々の賞を受賞している表題作は、母が紙で作ってくれた動物たちと僕の物語。やさしく切ない気持ちになる一作。この作品を含め15の短編は、様々な視点から、技術が人間にもたらすものを想像さ…
南アフリカの少女の、とんでもなく奇想天外な半生を描いた物語。とても深刻な話なのにコメディのような展開がハラハラしながら楽しめた。南アフリカのアパルトヘイト問題や核開発問題をはじめ、世界の歴史を踏まえたストーリー展開も秀逸…
第二次世界大戦下のフランス、ドイツ人の少年とフランス人の盲目の少女の人生が一瞬だけ交差する瞬間を描いた作品。厳しい環境でも小さな幸せを見出そうとする二人が瑞々しく描かれている。文体が少々読みづらいが、ストーリーは申し分な…
天体力学の三体問題をモチーフにした中国発のSF小説。科学技術の発展が人類に齎した功罪を考えさせるのかと思えば、科学的に興味を惹かれるアイデアもあり、先の読めない展開に興奮しながら頁を捲った。まさにSFの王道!三部作の第一…