メッセンジャーの仕事をしている男の心の内を刻々と綴る前半、そして突如シーンが変わってそこに至る過程と気づきが描かれる後半。どことなくニヒルな雰囲気もある主人公だが、その内にある抑えようのない衝動が彼の人生を導いていく。社…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
メッセンジャーの仕事をしている男の心の内を刻々と綴る前半、そして突如シーンが変わってそこに至る過程と気づきが描かれる後半。どことなくニヒルな雰囲気もある主人公だが、その内にある抑えようのない衝動が彼の人生を導いていく。社…
東日本大震災で津波にさらわれて行方不明になった知人が、ドイツのゲッティンゲンに現れる。そこで流れる淡々とした時間──そう、時間である。同じ場所にいても、過去を生きた人やそこにあったものと、今生きていてここにあるものは、重…
記憶を失くした少女がたどり着いたのは小さな島だった。そこで話される複数の言葉は、理解できる言葉と、理解できない言葉があったが、ノロと呼ばれる歴史と責任を背負う女性のみが使うことを許される言葉を、彼女は理解することができる…
五十を過ぎた男と、その妻が、互いの性生活や性欲のことを日記に綴っていく「鍵」。互いに読まれることを意識した日記だが、互いに相手の日記は読むことがないと主張しながら、実際のところはわからないまま物語は進んでいく。 一見する…
アイドルを追いかける高校生の少女にとって、「推し」は自らの背骨であると認識するほど生活の中心だった。その推しがファンを殴り炎上した。 日常生活も学校生活も何もかも上手くいかない。それでも、推しのことを見ているとき、考えて…
上野恩賜公園で生活するホームレスの高齢男性。福島県の相馬で昭和天皇と同じ日に生まれた彼は、家族のために出稼ぎで各地を転々とする。戦争を経験し、高度経済成長期を経て、日本の成長を支えた彼が行きついた先は上野だった。 故郷は…
アフリカで難民となってオーストラリアに来ることになった女性サリマは、言葉もわからない場所で自分と子供たちが生きていくために働き始める。言葉の壁を感じたサリマは英語を教えてくれる訓練校に通い始め、そこで日本人女性ハリネズミ…
久しぶりに読んだ村上春樹の本──。自分の部屋の本棚にあるのを人に見られたら、なんとなく気恥ずかしい感じがするし、本屋さんで平積みになっているのを買うと、ハルキストを気取ってると思われるんじゃないかと自意識過剰になってしま…
自分は何者かであるかを深くは考えず、ただ何者かではあるのだろうと漠然と信じて、ただ本能のあるがままに日々を過ごす学生時代。何も考えずに熱くなれたラグビーがあったのはついこの前のこと。前の彼女と、今の彼女、自分にとって都合…
沖縄の郷土資料館で資料整理を手伝う主人公の未名子は、ある変わった仕事を始める。それは、遠くにいる人たちにオンラインでクイズを出題して交流するというものだった。そして、ある日、未名子が暮らす家の庭に大きな動物が迷い込んでく…