カテゴリー: 純文学

ヘヴン(川上 未映子)

公平な世の中など幻想に過ぎない。十四歳の僕が知った現実だった。だから自分でどう生きるかを決めなくてはいけなかった。たった一人の友達だった彼女がそのことを教えてくれていたのに。圧倒的な切なさと虚しさ。彼が最後に見た普通の世…

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空港にて(村上 龍)

八つのシチュエーションで、そこにいた人々がどのような過程を経てそこに至り、その瞬間何を考え、そしてどこへ向かおうとしているかを描いた短編集。 「コンビニにて」始まり、居酒屋、公園、カラオケルーム、披露宴会場、クリスマス、…

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王国(中村 文則)

「掏摸」の兄妹編でもある本作品も、木崎に運命を握られてもてあそばれる主人公が描かれている。自分で人生を選んでいるつもりでも、実は大きな力によって運命が操られているのかもしれない。それでもなお抗って生きようとする人間という…

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人間(又吉 直樹)

主人公の永山が何者かであろうとして考え、行動することに共感すると、そのあとでその共感が凡人の域を出ないことを指摘される。そこには情けなさがあり、でも凡人であることを受け入れてしまう自分がいる。本を読みながら、そんなことが…

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背高泡立草(古川 真人)

長崎の島にある古い納屋、その芝刈りに向かう親族たち。いまや無人になっているその場所をなぜきれいに維持しなくてはいけないのかと娘は母たちに尋ねる。答えを聞くことは簡単だが、自分で考えてみること、調べてみること、そして感じる…

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伊豆の踊子(川端 康成)

ノーベル文学賞作家・川端康成氏の作品は、過去に「眠れる美女」しか読んだことがなかった。今回、二十代の頃に書いた名作「伊豆の踊子」を読み、著者の若々しい感性に触れた。二十歳の青年が一人旅の途中で旅芸人の一団と出会い、その中…

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沖で待つ(絲山 秋子)

会社の同僚との交流を描いた表題作は、現代の人間の距離感や寂しさ、その中で他の人に惹かれる気持などが非常にうまく表現された作品だと思う。突然死んでしまった同僚が残した言葉がじんわりと沁みる。同時に衆力された「勤労感謝の日」…

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