千駄木の付近に流れていた心川(うらかわ)。その周囲に人々が住み着いて町となった心町(うらまち)。裏町を心町とするところが人情味のある場所を表している。人には言えない事情があってここに住むようになった人たちは、互いに適度な…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
千駄木の付近に流れていた心川(うらかわ)。その周囲に人々が住み着いて町となった心町(うらまち)。裏町を心町とするところが人情味のある場所を表している。人には言えない事情があってここに住むようになった人たちは、互いに適度な…
日本の第21代天皇である雄略天皇(ワカタケル)を描いた本作は、今から千五百年以上前の古墳時代、現代とは倫理観も異なる世界を、人の世の物語としてしっかりと描いた作品である。 ワカタケルの身の回りには、常に死があったように思…
戦国の浮世に、加賀邦ノ介という一人の踊り手が現れた。織田信長、明智光秀、千利休、豊臣秀吉、徳川家康、彼らの心を捉えるその踊りは、世をかき乱すものだったのか。そして、邦ノ介が追い求めたものとは……。 この物語では、戦国の武…
江戸時代の中頃、田沼意次が権勢を握っていた時代、吉原はそれはそれは華やかな活気に溢れていた。大籬の舞鶴屋四代目楼主である庄右衛門は、売られてきた二人の少女を立派な花魁に育てるために心血を注ぎ、その成長を見守っている。やが…
甲賀忍者の丸子笹之助は、武田信玄暗殺の密命を受け、先輩格の忍者・孫兵衛と共に武田家に仕官する。しかし、忍者としては致命的な心の弱さを抱えた笹之助は、信玄の侍女に恋をし、さらには信玄にも惚れ込んでいく。 孤児であった自分を…
勘定所勤めをする表の顔と、影御用で活躍する裏の顔を持つ笠井半蔵が、南町奉行のために尽力する。一方、南町奉行に恨みを抱く者たちとの人間関係もある半蔵が、自分の仕事にどう折り合いをつけていくのかというのも見所の一つである。 …
明治時代になり、文明開化の波が日本の各地にも広がっていった時期、北海道のオベリベリ(帯広)という新天地を目指した開拓者たちがいた。依田勉三が率いる晩成社が選んだその場所は、和人にとっては未開の地であり、アイヌの人々が暮ら…
人間の歴史は、実際の起こったことの間に、多くの人間の感情が介在している。それがどんなものだっかのかは想像するしかない。 本作は、本能寺の変を巡る歴史ミステリーである。信長を誰が殺したのか。光秀は謀叛を起こしたのか。なぜ秀…
羽柴秀吉が柴田勝家を破った賤ケ岳の戦いにおいて、武功を挙げた秀吉の近習7人は、賤ケ岳の七本槍と称賛された。彼らはいずれも秀吉によって見出された者たちで、その発展に大きく貢献した者たちであった。しかし、賤ケ岳でも同じく戦い…
能楽の曲目をベースにした八つの物語。安易なハッピーエンドではなく、逃れられない人間の業が溢れていて、能面の下にある人間の本性に怖さを感じた。 山の中で山姥の舞を見せる遊女の心中を描いた話や、裏切られてもまた信じたい女の話…