遠野物語(柳田 国男)

先日、「始まりの木」(夏川草介著)を読み、やはり「遠野物語」を読まなくてはと積読本から抜き出してじっくりと読んだ。少しずつ消化しながら読んだつもりだが、理解しきれていないところも多々ある。しかし、日本という国、そして日本人の感性というものの一端を感じることはできたように思う。

遠野地方に語り伝えられる信仰あるいは怪談のような物語は、不思議というより心にすっと入ってくるような話が多い。例えば、オシラサマやオクナイサマなどの信仰は、宗教かといわれると違う気がするが、説明はできなくても感覚として腑に落ちる。私自身、そもそも日本人にとっての宗教観は、いわゆる一神教でいう「宗教」とは異なるものだと感じていたが、そのことがこの物語を読んでいてその思いは確信に変わった。

巻末にある吉本隆明氏の解説も素晴らしく、この物語の理解を深めることに繋がった。明治四十三年に発表されて以来、今なお読み継がれている「遠野物語」は、人の心にある感性を伝えていくものであり、まさに民俗学の教科書ともいえる一冊である。

個人的おすすめ度 3.5