始まりの木(夏川 草介)

未来を照らす一冊を見つけた。

民俗学を専攻する大学院生の藤崎千佳は、偏屈な民俗学者・古屋神寺郎の元で学んでいる。千佳は、脚の悪い古屋の荷物持ちとして各地を一緒に巡りながら、民俗学とは何を学ぶ学問なのかということから、そもそも何のために学ぶのかという根本的な問題を考えるようになる。

物語は柳田國男の遠野物語から始まり、柳田國男が追い求めた「日本人とは何か」ということが少しずつ描かれていく。例えば、一神教の宗教では神は信じる者だが、日本における八百万の神は感じるものであるという説明には心の底から共感した。あるあらゆるものにその存在を感じ、感謝しながら生きているのが日本人であるという。しかし、そのことを忘れ、本当に無宗教になってしまいつつある日本人を憂い、このままでは滅んでいくだろうと嘆くのである。

それでは、滅んでしまわないために何が必要なのか。未来のために何を学ぶべきなのか。そこで、民俗学の出番なのである。

ということで、積読本になっている遠野物語もしっかり読まなくては!

個人的おすすめ度 5.0