アイドルを追いかける高校生の少女にとって、「推し」は自らの背骨であると認識するほど生活の中心だった。その推しがファンを殴り炎上した。 日常生活も学校生活も何もかも上手くいかない。それでも、推しのことを見ているとき、考えて…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
アイドルを追いかける高校生の少女にとって、「推し」は自らの背骨であると認識するほど生活の中心だった。その推しがファンを殴り炎上した。 日常生活も学校生活も何もかも上手くいかない。それでも、推しのことを見ているとき、考えて…
アフリカで難民となってオーストラリアに来ることになった女性サリマは、言葉もわからない場所で自分と子供たちが生きていくために働き始める。言葉の壁を感じたサリマは英語を教えてくれる訓練校に通い始め、そこで日本人女性ハリネズミ…
自分は何者かであるかを深くは考えず、ただ何者かではあるのだろうと漠然と信じて、ただ本能のあるがままに日々を過ごす学生時代。何も考えずに熱くなれたラグビーがあったのはついこの前のこと。前の彼女と、今の彼女、自分にとって都合…
沖縄の郷土資料館で資料整理を手伝う主人公の未名子は、ある変わった仕事を始める。それは、遠くにいる人たちにオンラインでクイズを出題して交流するというものだった。そして、ある日、未名子が暮らす家の庭に大きな動物が迷い込んでく…
長崎の島にある古い納屋、その芝刈りに向かう親族たち。いまや無人になっているその場所をなぜきれいに維持しなくてはいけないのかと娘は母たちに尋ねる。答えを聞くことは簡単だが、自分で考えてみること、調べてみること、そして感じる…
1990年の芥川賞受賞作を含む3作品を収録。妊娠した姉夫婦と一緒に暮らす妹の視点から、悶々として文句を言いたても言えない秘めた内心を描いている。他の2作品も含めて、あまり人には言えないが、心に刺さった小さな棘のようなもの…
青年の神への冒涜ともとれる数々の行動には、空虚で何もない自分へのいら立ちが感じられた。厭世的な表現をしながら、どこかで最期の倫理を超えることを躊躇する自分がいる。そこに読者としての共感があるように思う。芥川賞受賞作らしさ…
会社の同僚との交流を描いた表題作は、現代の人間の距離感や寂しさ、その中で他の人に惹かれる気持などが非常にうまく表現された作品だと思う。突然死んでしまった同僚が残した言葉がじんわりと沁みる。同時に衆力された「勤労感謝の日」…
むらさきのスカートの女のことを、黄色いカーディガンの女の視点から描く、何気ないけれどとても面白い芥川賞受賞作。起承転結もしっかりしていて、ラストはそこかっという感じで、最後まで楽しく読むことができた。先入観なく読んでみて…
男が岩手でただひとり心を許した相手は、いま何どこにいて、何を思っているのだろうか。釣りをしながらする何気ない会話から、小さな喜びと大きな孤独感を感じる。震災が発生し、相手の実家を訪ねるシーンは、人生のやるせなさを感じずに…