カテゴリー: 芥川賞候補作

影裏(沼田 真佑)

男が岩手でただひとり心を許した相手は、いま何どこにいて、何を思っているのだろうか。釣りをしながらする何気ない会話から、小さな喜びと大きな孤独感を感じる。震災が発生し、相手の実家を訪ねるシーンは、人生のやるせなさを感じずに…

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しんせかい(山下 澄人)

あれ、今自分は何をしてたんだっけ?と思う時間、人生を変えようと思ってはじめたことの途中でまたいろいろと考えて擡げてくる疑問、そういう感覚がうまく文字に表現されている。自分探しというのは、大げさなことではなく、こんな日常の…

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死んでいない者(滝口 悠生)

父の死によって集まった子供たちと孫たち、そしてその血縁者たちらが、葬式を控えてそれぞれの思いに至る物語。二度と同じ時はない、貴重な時間が流れていく。死んでいない者とは残された人たちのことであり、誰もが死ぬという当たり前の…

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爪と目(藤野 可織)

芥川賞受賞作の「爪と目」ほか2作を収録した短編集。表題作は、子供の視点から描いた父親の愛人の話で、アンバランスな関係性を淡々と描いている。個人的には「ちびっこ広場」で描かれる母子の結末が、想像を掻き立てるようで面白かった…

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蹴りたい背中(綿矢 りさ)

著者が十九歳の時に書いた芥川賞受賞作品。高校生の青春を描いたものだが、そこに感じる孤独感や苛立ちなどが素晴らしい感性で描かれている。十代で読んだら素直に共感したと思う。自分だけが孤独だと思っていた青春期を懐かしく思い出し…

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ニムロッド(上田 岳弘)

着眼点がとても素晴らしく、端々に刺さる表現があった。例えば「ドルは紙切れとコイン、それから武器でできている。仮想通貨はソースコードと哲学でできている」という一言が、まさに現代社会を表現しているように感じた。ダメな飛行機コ…

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1R1分34秒(町屋 良平)

淡々とした語り口でボクサーの内面を綿密に綴った芥川賞作品。試合に負けてから次の試合が決まるまでの悶々とした日々や、試合へ向けてトレーニングする中での葛藤を読んでいると、決して「いい人」ではない主人公を「頑張れ」と応援した…

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送り火(高橋 弘希)

2018年上期の芥川賞受賞作。青森県の中学校に転向になった主人公は、同級生と打ち解けていくのだが、その中で繰り返される陰湿な感じのいじめの様子が描かれている。一見すると楽しそうな日常と、そこに潜む怖さ。そして物語はあると…

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