飼い主を失ったと思われる多聞(たもん)という犬との出会いが、人々の心を隙間を埋めていく。東日本大震災によって仕事をなくした男、窃盗団の外国人など、各章ごとに問題を抱えた人間の視点から描かれる物語だが、主人公はあくまで犬で…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
飼い主を失ったと思われる多聞(たもん)という犬との出会いが、人々の心を隙間を埋めていく。東日本大震災によって仕事をなくした男、窃盗団の外国人など、各章ごとに問題を抱えた人間の視点から描かれる物語だが、主人公はあくまで犬で…
1995年の作品だが、今読んでなお面白さは変わることがなく、むしろ過去の時代を知りながら読むとより楽しさが増してくる。主人公はアル中のバーテンで、新宿中央公園で発生した爆弾テロ事件に巻き込まれ、その容疑者として追われる立…
舞台は明治から昭和にかけての樺太(サハリン)。そこで出会い、そこで生きる人々の声が聞こえてくる。アイヌ人、ポーランド人、日本人、ロシア人、あるいはオロッコなど、それぞれが尊重しあって生きていた場所は、本当の意味での「無知…
近松門左衛門は知っていたが、浄瑠璃作家・近松半二のことは初めて知った。浄瑠璃をを作る人、演じる人の熱い思いが伝わる物語で、大ヒット作が生まれる必然の雰囲気がとても面白く、さらに浄瑠璃と歌舞伎の比較も興味深い。直木賞受賞は…
この物語を読んでなお沖縄に無関心でいられる人がいるのだろうか。「戦争をしないことにした日本の平和がアメリカの傘下に入ることで成立しているなら、その重要基地のほぼすべてを引き受ける地方が国政をつかさどるべきだとは思わないか…
40代を目前にしたアラフォーの男たちとその家族を描いた短編集は、この世代を過ごした男性への心の栄養となることはもちろんだが、多くの読者に穏やかな感動を与えてくれる物語だろう。色々あるが、頑張っていこういう気持ちになれる一…
フランス国王ルイ12世と王妃ジャンヌの離婚訴訟を巡る法廷サスペンスだが、文句なく面白い一冊だった。主人公は弁護士のフランソワで、訴訟を巡る背景と、主人公の人生がクロスして描かれ、どんどん引き込まれた。著者の他作品も読みた…
彼女の人生は、行方不明になった娘を探すためのものなのか、あるいは別の何かのためなのか。ある事件に関連して人生が崩れていく人々を描いた直木賞受賞作。安易な救いがないからこそ考えさせられる物語だった。辛いけれど目を背けられな…
今どきの生き方と言っていいのか、とにかくモヤモヤした感覚が頭や胸にたくさんつっかえるような人々の短編集。無職の女性にとって、社会の居場所はどこなのだろうか。これが現代を生きる人間のリアルなのかなとも思うが、最後の作品が「…
芸者である愛八さんの人生は涙なくして読めなかった。研究者・古賀十二郎氏との出会い、長崎ぶらぶら節という歌との出会い、愛八さんの人や物事に対する姿勢は終始一貫していて感動する。また、古賀十二郎氏の愛八への言葉にも、心に響く…