テロリストのパラソル(藤原 伊織)

1995年の作品だが、今読んでなお面白さは変わることがなく、むしろ過去の時代を知りながら読むとより楽しさが増してくる。
主人公はアル中のバーテンで、新宿中央公園で発生した爆弾テロ事件に巻き込まれ、その容疑者として追われる立場となってしまう。
彼の現時点は、その過去が描かれることによって必然であることが明らかになっていく。
また、テロの犠牲者となった大学時代の友人や、逃亡する彼を助けるやくざ、ホームレスらも、過去を背負って現在に至ることが感じられ、それぞれの展開に納得しながら読み進めることができた。
なにより、どこまで読んでも飽きないどころか、次の展開が気になって、途中で本を閉じることができなくなった。
江戸川乱歩賞、直木賞をダブル受賞した名作は、読者を睡眠不足にすること間違いなしである。

個人的おすすめ度 4.0