推し、燃ゆ(宇佐見 りん)

アイドルを追いかける高校生の少女にとって、「推し」は自らの背骨であると認識するほど生活の中心だった。その推しがファンを殴り炎上した。

日常生活も学校生活も何もかも上手くいかない。それでも、推しのことを見ているとき、考えているときだけは没頭できる。他人から見たら、それは病にすら見えるかもしれない。しかし、それだけが彼女が感じられる生きる意味だとしたら、それは否定すべきものではないかもしれない。

上手く説明ができず、身近な人からも理解されていないように感じる、そうした歯がゆさがとてもストレートに伝わってくる。できないことが多いことについて、発達障害という言葉で片づけてしまえばいいことでもなく、ただそうした思いがあるということを感じるほかないと思う。

ラストシーンとなる情景描写には希望を感じた。できないことを数える社会ではなく、できることをひとつでも見つながら生きられる社会であってほしい。

個人的おすすめ度 4.0