四部作の最終巻。本多や透の人間に対する捉え方は厭世的であり、かつ自分の自尊心は決して傷つけられない利己主義もある。そして、それこそが人間だ、お前もそうだろう、と読み手の喉元にもナイフを突きつけるような厳しさがある。人生で…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
四部作の最終巻。本多や透の人間に対する捉え方は厭世的であり、かつ自分の自尊心は決して傷つけられない利己主義もある。そして、それこそが人間だ、お前もそうだろう、と読み手の喉元にもナイフを突きつけるような厳しさがある。人生で…
むらさきのスカートの女のことを、黄色いカーディガンの女の視点から描く、何気ないけれどとても面白い芥川賞受賞作。起承転結もしっかりしていて、ラストはそこかっという感じで、最後まで楽しく読むことができた。先入観なく読んでみて…
後感は、村上龍の限りなく透明に近いブルーを読んだときの感覚に似ていた。強がって生きているが、内心は純情で、臆病で、しかしその表現が人に理解されない不安。優しさでは満たされない孤独感や、自分の存在への疑問など様々な感情が無…
タイの王女にかつての友の転生を確信した主人公が、執着心を露わにして行動する様が辛くもあり、また、人間的でもある。作品全体として、官能美ともいえるような日本語表現の美しさ溢れ、また、輪廻転生に対する考察も非常に興味深かった…
男が岩手でただひとり心を許した相手は、いま何どこにいて、何を思っているのだろうか。釣りをしながらする何気ない会話から、小さな喜びと大きな孤独感を感じる。震災が発生し、相手の実家を訪ねるシーンは、人生のやるせなさを感じずに…
仕事をやめて新たな道を探している主人公・健斗と、同居する母、そしてすぐに「死にたい」と言う祖父。どうしたら祖父は死ねるのだろうと考える健斗の呟きが、コミカルかつシニカルに描かれていて、共感するところも多い。愛も感じたラス…
あれ、今自分は何をしてたんだっけ?と思う時間、人生を変えようと思ってはじめたことの途中でまたいろいろと考えて擡げてくる疑問、そういう感覚がうまく文字に表現されている。自分探しというのは、大げさなことではなく、こんな日常の…
父の死によって集まった子供たちと孫たち、そしてその血縁者たちらが、葬式を控えてそれぞれの思いに至る物語。二度と同じ時はない、貴重な時間が流れていく。死んでいない者とは残された人たちのことであり、誰もが死ぬという当たり前の…
1部で親友を失った本多は38歳となり、世故にたけた判事となった。しかし、親友が転生したと思われる青年・松沼勲と出会い、事態は急転する。純粋さと穢れの狭間での葛藤を見事に描いた作品で、自分が読むタイミングで理解の仕方が変わ…
芥川賞受賞作の「爪と目」ほか2作を収録した短編集。表題作は、子供の視点から描いた父親の愛人の話で、アンバランスな関係性を淡々と描いている。個人的には「ちびっこ広場」で描かれる母子の結末が、想像を掻き立てるようで面白かった…