カテゴリー: 純文学

蛇にピアス(金原 ひとみ)

後感は、村上龍の限りなく透明に近いブルーを読んだときの感覚に似ていた。強がって生きているが、内心は純情で、臆病で、しかしその表現が人に理解されない不安。優しさでは満たされない孤独感や、自分の存在への疑問など様々な感情が無…

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影裏(沼田 真佑)

男が岩手でただひとり心を許した相手は、いま何どこにいて、何を思っているのだろうか。釣りをしながらする何気ない会話から、小さな喜びと大きな孤独感を感じる。震災が発生し、相手の実家を訪ねるシーンは、人生のやるせなさを感じずに…

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しんせかい(山下 澄人)

あれ、今自分は何をしてたんだっけ?と思う時間、人生を変えようと思ってはじめたことの途中でまたいろいろと考えて擡げてくる疑問、そういう感覚がうまく文字に表現されている。自分探しというのは、大げさなことではなく、こんな日常の…

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死んでいない者(滝口 悠生)

父の死によって集まった子供たちと孫たち、そしてその血縁者たちらが、葬式を控えてそれぞれの思いに至る物語。二度と同じ時はない、貴重な時間が流れていく。死んでいない者とは残された人たちのことであり、誰もが死ぬという当たり前の…

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爪と目(藤野 可織)

芥川賞受賞作の「爪と目」ほか2作を収録した短編集。表題作は、子供の視点から描いた父親の愛人の話で、アンバランスな関係性を淡々と描いている。個人的には「ちびっこ広場」で描かれる母子の結末が、想像を掻き立てるようで面白かった…

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