伊豆の踊子(川端 康成)

ノーベル文学賞作家・川端康成氏の作品は、過去に「眠れる美女」しか読んだことがなかった。
今回、二十代の頃に書いた名作「伊豆の踊子」を読み、著者の若々しい感性に触れた。
二十歳の青年が一人旅の途中で旅芸人の一団と出会い、その中にいた踊り子に惹かれていく様子を描いた作品だが、まるで初めて女性に触れようとしている時のような、言葉にするのは気恥ずかしくなるような内面が丁寧に描写されていた。

表題作のほか、文庫には「温泉宿」「抒情詩」「禽獣」が収録されている。
後書きを読むとよくわかったが、後半の作品になるにつれて川端氏自身が年齢を経ていく中で作品が変化していくが、人間や社会に対する捉え方、世界観はすべてに通じるものがあると感じた。

個人的に好きだったのは、温泉宿で働く女たちの人生を描いた「温泉宿」で、伊豆の踊子にはなかった生々しい内面がさらけ出されているようだった。

個人的おすすめ度 3.0