一人称単数(村上 春樹)

久しぶりに読んだ村上春樹の本──。
自分の部屋の本棚にあるのを人に見られたら、なんとなく気恥ずかしい感じがするし、本屋さんで平積みになっているのを買うと、ハルキストを気取ってると思われるんじゃないかと自意識過剰になってしまう。
普段はもっとミーハーな本を読んでいるくせに、そんなことを考えながら、それでも買ってしまった一冊。

表題作を含む八編を収録した一冊。
どれもやっぱり村上春樹の世界どっぷりという感じで、わかるようで、わからないようで、作品の中である音楽を壁紙音楽と表現していたけれど、この本の中の短編もまた邪魔にならない心地よさで脳をふわりと通過していった。
それでも、あるタイミングでは唯我独尊の自己陶酔に浸るというか、マスターベーションに没頭した直後の恍惚と空虚さを感じて、少しの間は余韻が残ったりもしていた。

それぞれ違った色の作品ではあるものの、いつまでも青春が終わらないおっさんのような人が描く世界は、私の心にやさしくフィットした。

個人的おすすめ度 3.5