神さまの貨物(ジャン=クロード・グランベール)

ユダヤ人迫害が激しさを増す戦争の時代、ひとつの小さな命を守るために、両親はその命を投げ捨てるかのように他人に託した。その命を拾い受けた木こりの夫婦は、天傘の授かりものとしてその子を大切に育てるのだが、そのためには犠牲が伴う苦渋の決断があった。

子供に読み聞かせるような優しい文章の中に、愚かさと尊さが入り混じった人間のありようが表現されている。多くの命がまるで価値のないもののように失われていった時代だからこそ、小さな命に希望を感じるのだろうか。あるいは、今もなお世界は平和とは言えないからこそ、この作品に光を求めるのだろうか。

物語の終わりに、悲しくて素敵な出会いが待っている。そして、その子が力強く未来へ向かっていく様が見えた。

個人的おすすめ度 3.5