さよならも言えないうちに(川口 俊和)

「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの第四弾は、タイトルの通り別れてしまったことへの後悔を引きずった人が、過去に戻ることで、納得してこれからの人生を歩んでいけるようになる4つの物語である。現実を変えることはできなくても、ひとつの事実に気づくかどうかで、物事の見え方が変わってくる。そんなことがきっと日常には溢れている。

4編の中で、特に愛犬との物語を読みながら、5年前に亡くなった猫のことを思い出した。もし過去に戻ることができるなら、一瞬でもあの子に会いたいと思う気持ちが今でもある。一緒に暮らす犬や猫は家族と同じで、ただ人間が一方的に保護するばかりの存在ではなく、彼らも家族として暮らす人間のことを思いやり、互いに支えながら生きているのだと思う。

とても穏やかな気持ちで安心して読むことができる一冊。

個人的おすすめ度 3.5