ミカエルの鼓動(柚月 裕子)

医者は神か。医者に救いを求める患者や家族はその信者か。医療ロボット「ミカエル」を操る心臓外科医・西條は、日本におけるロボット支援下手術の第一人者として実績を積み重ねてきた。そして、所属する病院内でもその地位を確かなものにしつつあった。

しかし、ある時から西條の歯車は狂い始めていた。小さな綻びはやがて仕事ばかりではなく生活にも影響を及ぼすようになる。正体のわからない違和感が徐々に明らかになっていく中で西條は決断を迫られることになる。

医療技術の発展によって、多くの命が救われることは間違いない。そのために医療関係者たちが高い志を持って日夜努力していることには頭が下がる思いである。そのうえで、やはり医者も人間であるという当たり前の事実に気づかされる。

雪山の中で西條は命の先にあるものを見たのだろうか。

個人的おすすめ度 3.5