わしの眼は十年先が見える: 大原孫三郎の生涯(城山 三郎)

篤志家という言葉は、まさにこういう人物のためにあるのだと思う。明治から昭和にかけ、倉敷から日本の成長を支えた大原孫三郎氏と、その息子さんである總一郎氏。人として、経営者として、この方々の生き方には感銘を受ける。圧倒的な行動力、迷いのない判断、そして責任遂行能力、あらゆる面で学ぶことが多い。

現在のクラボウ、クラレ、中国銀行、中国電力などの社長を務め、この地域の一大財閥を築き上げる一方、社会福祉や文化事業にも多大なる貢献をしてきた。何より素晴らしいのは、これらの成果が今なお継続されていることである。そこには、人を大切にして育てていくという理念が根底にあるからに違いない。

今の日本において抜け落ちている視点、それは十年先、百年先を見据え、社会に投資していくことだと理解した。この本を薦めていただいた経営者の方に感謝したい。そして、ただ脱帽するばかりでなく、社会に対する姿勢を学び、自分自身もそうあれるように努力したいと思う。

個人的おすすめ度 4.0