この本を読む者は(深緑 野分)

物語とは何だろうか。それを記した本とは何だろうか。読長町という町にある御倉家の書庫にはたくさんの本があるのだが、その本には盗まれないように呪いがかけられているという。

その謎は本の中にあり、物語の中に物語がある。どこからどこまでが現実で、どこからが非現実なのか、この本を読んでいるとふと本を読んでいる自分は本当に実在しているのだろうかと考えてしまう。つまり、この本を読む者というのは、読者自身のことなのではないかと思ったりする。

この作品を心地よく読むのなら、素直にこの世界観に入り込んでみるといい。それは主人公が物語の世界を現実として受け入れていくのと同じように、想像力を働かせてこの世界をリアルに想像してみるといいと思う。そこには、想像力の自由さと、本を愛する熱い気持ちがある。

個人的おすすめ度 3.5