虚空の旅人(上橋 菜穂子)

シリーズ第四弾は、バルサではなく新ヨゴ皇国皇太子チャグムが活躍する。
隣国サンガルでの新王即位儀礼を舞台に、大きな事件が発生し、そこに巻き込まれていくチャグム……というより自ら巻き込まれていくという方が正しいだろう。

人の上に立つものはどうあるべきかを考えさせられるストーリーで、いずれ国を背負って立つチャグムの姿勢と、サンガルの指導者たちの姿勢を対比してみても、どちらが正しいかはわからない。
人々が幸せになるために指導者として何を選択すべきかは、いつでも究極の選択なのかもしれない。

チャグムがあるときこう言う。
「自国だけでも豊かに暮らせるくせに、他の国にまで手をのばそうと思うやつらもいる。そして、そういうやつらほど、人の世を激しく動かしていくのだ」

理想論はいくらでも語れるが、現実の社会を見れば人の欲望によってたくさんの不幸が生み出されている。
そしていつの間にか、その選択は正義となってしまう。
それでもなお、まっすぐ過ぎるチャグムを応援してしまうのは、指導者がそうあって欲しいと願う一市民の立場だからだろうか。

シリーズはまだまだ続く。
チャグムらの益々の活躍と成長が楽しみである。

個人的おすすめ度 3.5