風神雷神 Juppiter, Aeolus(原田 マハ)

作家の想像力は凄まじい。

同時代を生きた三人──俵屋宗達、原マルティノ、そしてカラヴァッジョ。
彼らが出会った記録はないが、出会わなかったという証拠もない。
そして、想像は自由である。

天正遣欧使節としてローマを訪れた人物の一人、アゴスティーノは俵屋宗達であったという設定も、物語を読んでいるうちにそれが史実だったのではないかとさえ錯覚してしまう。
三人だけでなく、織田信長や狩野永徳、伊東マンショ、千々石ミゲル、中浦ジュリアン、あるいはヴァリニャーノ神父など、歴史上の人物たちもこの作品の中で命を吹き込まれ、まるで目の前にいるかのように描かれている。

俵屋宗達の代表作といわれる風神雷神図屏風。
実際、この作品にどれほどの物語があるのかを想像し始めると、素人ながらにも芸術というものの奥深さを感じずにはいられない。

ため息が出るほど面白い作品だった。

個人的おすすめ度 4.5