アーモンドと呼ばれる脳の偏桃体が先天的に小さいために、感情をあまり持つことができない主人公は、まるで自分と正反対に感情を剥き出しにする少年と出会う。他人の気持ちを理解しようとするとき、共感を感じたり、反感を感じたりするの…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
アーモンドと呼ばれる脳の偏桃体が先天的に小さいために、感情をあまり持つことができない主人公は、まるで自分と正反対に感情を剥き出しにする少年と出会う。他人の気持ちを理解しようとするとき、共感を感じたり、反感を感じたりするの…
ロードレースについては薄い知識しかなく、きちんと見たこともなかった。それでもこの作品の圧倒的な臨場感に浸った。 オリンピックも狙えると言われた陸上選手は十八歳でロードレースに転向し、社会人となってからはプロのチームに所属…
割り切れない思いを抱えている六人の物語が六篇の連作短編となって綴られている。それぞれの登場人物はやがて、おいしいと評判のレストラン・ハライへと向かうのだが、構成が非常に巧みで読むべき順番に物語が並んでいる。同じ日に同じ場…
公平な世の中など幻想に過ぎない。十四歳の僕が知った現実だった。だから自分でどう生きるかを決めなくてはいけなかった。たった一人の友達だった彼女がそのことを教えてくれていたのに。圧倒的な切なさと虚しさ。彼が最後に見た普通の世…
ヴェネツィア共和国の孤児院ピエタは、付属の音楽院を併設していた。そこで合奏・合唱の娘たちを指導していた作曲家アントニオ・ヴィヴァルディの訃報が教え子だったエミーリアに届く。ピエタ及びヴィヴァルディに係わった女性たちの交流…
親と子の問題を描いた5編の連作短編。「寄せ集め」と評されるニュータウンでは、お互いに他人にはあまり深くは関わらない。家の中では、暴力やネグレクトなどの虐待があっても、それを取り繕う親もいて、問題が表面化しづらい。この本は…
この本の読後感を一言で表現するのはとても難しい。研究好きの主人公アオヤマ君なら、的確な表現を見つけてくれるかもしれない。 ある日、突然現れたペンギンたちの謎、そしてお姉さんの謎を研究していく主人公は、理屈っぽくて理性的な…
昔話をベースに殺人事件が起きて、その謎を解き明かしていく短編5話。一寸法師、花さかじいさん、鶴の恩返し、浦島太郎、桃太郎と、どれもみんなが知っている話だが、子供心にいい話だなと思っていたものが、こんなことになってしまうの…
主人公は吉祥寺の書店に努める書店員。バカすぎる店長、カリスマ店員、癖のある客や作家、さらには出版社の営業などが絡んで、飽きない日常が繰り広げられる。最初から最後まで、笑いながら、時には泣いて、そしてやっぱり文学っていいな…
人が生まれて、生きるということは、辛いことなのだろうか。それは誰にとって幸せなことなのだろうか。 一部は、主人公の夏子と、姉の巻子と姪の緑子の物語。家族だからこそ感じてしまうわだかまり、その空気感が行間から伝わってきて、…