ピエタ(大島 真寿美)

ヴェネツィア共和国の孤児院ピエタは、付属の音楽院を併設していた。そこで合奏・合唱の娘たちを指導していた作曲家アントニオ・ヴィヴァルディの訃報が教え子だったエミーリアに届く。ピエタ及びヴィヴァルディに係わった女性たちの交流を描いた物語は、ヴァイオリンの旋律のように優しく、そして時に悲しい音色を奏でた。

この本に描かれるピエタという場所は、孤児であることをマイナスに捉えることなく、人としてまっすぐに育つことができる場所である。そのことは、外部からピエタに関与した人にも少なからず影響を与えたことだろう。

女性たちの交流を描きながらも、物語はヴィヴァルディに関する謎を追っていく。その過程で涙が零れる瞬間もあり、やがて感動のクライマックスへと向かっていく。

この本を読むまで、ヴィヴァルディの曲は知っていても、ピエタも知らなければ、彼の人生について想像したこともなかった。しかし、曲がつくられた時代とそこに生きた人々を想像すると、曲を聴く楽しみはさらに広がるように思う。

とても穏やかな気持ちで読了できた、素敵な一冊だった。

個人的おすすめ度 4.0