カテゴリー: サスペンス

銃(中村 文則)

確かに後味はよくない。しかし、読むことを止められない。銃を拾ってしまった男が、それを持つだけで自分の意識が変わったと思えたり、しかしそれを使いたい衝動と葛藤したりする様は、ある部分は狂気に見えるが、一方で私自身の中にもあ…

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破滅の王(上田 早夕里)

満州事変から敗戦までの間、主に中国を舞台に繰り広げられる細菌兵器の開発とそれに拘る人々の戦いを描いた作品。登場人物たちの苦悩が、キリキリする胃の痛みのように読み手に伝わってきて、辛いけれど心に残る物語となっている。ズシリ…

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凶犬の眼(柚月 裕子)

前作「孤狼の血」に魅せられて、再び昭和の雰囲気あふれる任侠の世界を読むことになった。極道かどうか以前に、まずは人として筋を通すことが仁義であろうと思うが、現実はなかなかそうは生きられない。正義と仁義の違いを考えさせられた…

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傍流の記者(本城 雅人)

新聞社内の人事争いと社内改革を描いた物語で、同期の6人がそれぞれの立ち位置から真剣に戦う様子から、燃え上がってくる静かな情熱を感じる作品だった。新聞社に限らず大きな組織の中で戦うというのはこういうことかと思いつつ、ラスト…

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虹の谷の五月(船戸 与一)

フィリピンの複雑な歴史的背景、理不尽が蔓延る社会、その中で子供から大人へと成長していく主人公。人の命があっけなく奪われていく社会で、真人間として生きていくことの難しさを感じた。知人のフィリピン人が、平和が一番と言っていた…

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