まもなく人類は滅びる──そのニュースが報じられた翌日、虐められていた高校生の少年は、それでも何も変わらない現実を受け入れかけていた。死んでしまいたいと望んだのに、何もできない自分自身に失望しかけていた。しかし、彼には思い…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
まもなく人類は滅びる──そのニュースが報じられた翌日、虐められていた高校生の少年は、それでも何も変わらない現実を受け入れかけていた。死んでしまいたいと望んだのに、何もできない自分自身に失望しかけていた。しかし、彼には思い…
人生に躓いたとき、思い通りにならない時、次の一歩を踏み出すきっかけをくれたのは一冊の本だったかもしれない。しかし、そのきっかけを求める初めの一歩は自分で踏み出したものだ。その一歩がこの図書室に繋がり、少しだけ視点を変えて…
他の鯨には聞こえない声で歌う孤独な鯨がいるという。そのトーンは52ヘルツ。主人公のキナコは、誰にも聞こえない声を上げ続け、孤独の中で生きてきたのだが、やがてその声を聴いてくれる人が現れる。そして、同じように52ヘルツの声…
冷戦の時代、米国のCIAがソビエト連邦に立ち向かうために武器としたものに文学があった。ボリス・パステルナークの小説「ドクトル・ジバゴ」は、ロシア革命を批判しているとして言論統制化のソ連では出版されなかった。そこでCIAは…
今だからこそ感じる人との出会い、そして繋がりの大切さ。表題作を含む五編の出会いの物語は、人の温かさを思い出させてくれる素敵な作品ばかりだった。 「八月の銀の雪」は、就活中の大学生と、コンビニで仕事をするベトナム人留学生の…
鰻が食べたい──読み終えた第一声はそれだった。 鰻屋「まつむら」へやってくる女子たちの物語だが、5つの物語の中には常に典型的なダメ男の権藤祐一が出てくる。祐一と長く同棲している笑子、学生時代に祐一に告白して拒否された加寿…
医師・是永史郎は、医大の奨学金免除のため、刑務所の医者として働き始める。そこでは、まず患者が嘘をついていないかどうかを見極めるところから診察が始まる。史郎にとってこの仕事は義務的にこなすだけの仕事であったが、患者たちと向…
美術館のある絵の前でクライマックスを迎える六編の物語。寂しい時、後悔した時、人生に行き詰まった時、絵は無言で語りかけてくる。そこで過去を顧みながら、新しい一歩を踏み出していく。 美術館に行って感動する作品に出会えることが…
杉並の古い洋館に暮らす四人の女たち。家主の牧田鶴代と、その娘で刺繍作家の佐知。偶然に出会いから佐知と友達になった同年代の雪乃、そして雪乃の会社の後輩である多恵美。さらにすぐ近くに暮らす老人・山田。 個性的な面々が織りなす…
写真家であれば、写真とは何かということを考えるのかもしれない。そして悩み、シャッターが押せなくなることもあるのかもしれない。スマホが普及して、写真を撮るという行為そのもののハードルは下がったが、何のために、何を撮るのかと…