滅びの前のシャングリラ(凪良 ゆう)

まもなく人類は滅びる──そのニュースが報じられた翌日、虐められていた高校生の少年は、それでも何も変わらない現実を受け入れかけていた。死んでしまいたいと望んだのに、何もできない自分自身に失望しかけていた。しかし、彼には思いを寄せた少女がいた。彼女のために行動しようとする彼の背中を押してくれたのは、一人で彼を育ててくれた強い母だった。

人類が滅びることを知った中年の男は、不器用な人生を送っていた。そして、人類の行く末を知る直前、男は取り返しのつかない一線を越えてしまっていた。覚悟を決めていた男は、ふと別れた女に会いに行くことを思いつく。

話は戻り、少年が好きだった少女は、ディーバと称されるミュージシャンを追いかけていた。第一線で活躍していたその女性は、人類が滅びていく中で決断をする。

いくつもの人生がやがてひとつに結集し、最期の瞬間を迎えようとしている。人間とは何だろうか。人間の幸せとは何だろうか。幸せを感じながら人生を終わることができるなら、それはよい人生だったと言えるだろうか。読了後もそんなことをつらつらを考えて、明確な答えを出せない問いが続いている。

個人的おすすめ度 3.5