お探し物は図書室まで(青山 美智子)

人生に躓いたとき、思い通りにならない時、次の一歩を踏み出すきっかけをくれたのは一冊の本だったかもしれない。しかし、そのきっかけを求める初めの一歩は自分で踏み出したものだ。その一歩がこの図書室に繋がり、少しだけ視点を変えてみたら世界がまるで異なるものに見えてくる。

五編の連作短編に登場する主人公たちは、小学校に隣接する図書室で、とても印象に残る図書館司書に出会い、本を紹介される。なぜこの本なんだろうと思いながら手に取った一冊は、やがて彼らに気づきをもたらし、人生に大きな変化を与えていく。それぞれに出てくる本は実際に出版されている作品で、私自身も子供のころに読んだはずの絵本であったり、図鑑であったり、詩集であったりもして、小説以外の本ももっと読んでもいいなという気持ちになってくる。

読んでいて心地よかったのは、五人の主人公が感じる辛さや哀しさ、不甲斐なさ、そして喜びなどが、自分自身のことのようにリアルに感じられたこと。主人公が泣きたい気持ちになったときには同じように泣けてきたし、嬉しいと思ったときには微笑みながら読んでいたと思う。本を読みながら、その世界の人になったかのように物語に浸ることができた。

読み終えてしまうのがもったいない気持ちで、わがままを言えば続編を読みたい。それから、今度図書館に行ったら、小説以外のコーナーも眺めてみようと思う。

個人的おすすめ度 4.5