浅田家!(中野 量太)

写真家であれば、写真とは何かということを考えるのかもしれない。そして悩み、シャッターが押せなくなることもあるのかもしれない。スマホが普及して、写真を撮るという行為そのもののハードルは下がったが、何のために、何を撮るのかということを考えるきっかけになった。

家族が喜ぶ写真を撮ろうという浅田家の次男と、息子のためにできることをしようという両親や長男。互いの思いやりが表現された写真は、鑑賞者の心を幸せで満たしてくれる。そして、幸せが幸せを呼んで連鎖する。

しかし、笑顔を絶やさない人々の裏に、人には見せない悲しみが隠されていることもある。そのことがシャッターを押す指を思いとどまらせることもあるのだろう。そういう感情が、無機質なカメラを通って、血の通った写真という形になっていく。

読んでいて何度も泣けたが、不幸や不条理を感じたのではない。人としての生き方に感動したのである。読み終えた後、心に温かいものが残る良い作品である。

個人的おすすめ度 3.5