ミステリー要素あり、コメディあり、歴史、青春スポ根、そして文学と、様々な要素が奇想天外な物語の中に凝縮されている、まさに万城目ワールドといえる作品。「あおによし」は奈良を表す枕詞で、奈良の女子高に教師として赴任した主人公…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
ミステリー要素あり、コメディあり、歴史、青春スポ根、そして文学と、様々な要素が奇想天外な物語の中に凝縮されている、まさに万城目ワールドといえる作品。「あおによし」は奈良を表す枕詞で、奈良の女子高に教師として赴任した主人公…
脚本家と映画監督が、故郷の一家殺人事件を調べていく中で、自分自身の過去とも向き合っていく物語。誰もが割り切れない過去を背負いって生きている。笑顔の裏にも、涙の影にも、人には見せたくない思いが隠されている。そのことに気づく…
聖人ばかりであれば犯罪は起きないのかといえば否だろう。技術革新によって操作のあり方は人間の心を超えていく。しかし、警察官もまた人間だという当たり前のことに気づかされる。ラストシーンにある上山の葛藤。警察としてどうあるべき…
出版という仕事で偶然に出会った三人の女性。それぞれが夢を抱き、社会に評価される人生を歩みながらも、実際には様々な葛藤を抱えて生きている。もどかしく、心が何度も痛くて、だけど最高に嬉しい瞬間がある。懸命に生きることの美しさ…
近松門左衛門は知っていたが、浄瑠璃作家・近松半二のことは初めて知った。浄瑠璃をを作る人、演じる人の熱い思いが伝わる物語で、大ヒット作が生まれる必然の雰囲気がとても面白く、さらに浄瑠璃と歌舞伎の比較も興味深い。直木賞受賞は…
夫に先立たれて屋敷に一人になった正子おばあちゃんと、そこに転がり込んだ若者・杏奈を中心に物語が展開する。単なるドタバタ劇と思って読んでいたが、後半は畳みかけるように考えさせられた。タイトルの意味も深く、ラストは素晴らしく…
戦争で大国に蹂躙されるポーランド人の悲しみを、世界は忘れてはいけない。その悲劇はナチスだけのせいではなかった。人は誰かのために命を投げ出すこともできれば、狂ったように人間性を捨てることもできる。ショパンの革命のエチュード…
仁和寺の僧・寛朝が坂東の地で平将門と出会って受けた衝撃。人間の美しさと愚かしさが、楽音となって奏でられていく。生身の人間同士が血を流しあいながら本気で生きているその魂に様に圧倒される。読んでいるだけで全身に痛みを感じるよ…
中年になり、一人になって感じる心の隙間。相手に惹かれるのは、純粋な恋愛感情なのか、あるいは隙間を埋めるための代用なのか。二人で未来を生きたいと願う男と、今を生きようとする女の小さなすれ違いが切ないが、日々を懸命に生きる喜…
そこにあるのが当然だと思っていた国立西洋美術館。しかし、そこに至るまでの松方幸次郎をはじめとする人々を想像すると、タブロー(絵画)から新しい物語が見えてくる。「飛行機じゃなくタブローを。戦争じゃなくて、平和を。」の言葉に…