カテゴリー: 直木三十五賞候補作

信長の原理(垣根 涼介)

信長も覆すことができなかった自然の定理。織田家を大きな営業会社のような感じで捉え、一生懸命に働き続けた家臣(社員)たちの行く末を描いた作品。織田家はブラック企業なのか、優良企業なのか、賛否あるところだろうが、信長の感性は…

全文を読む

童の神(今村 翔吾)

平安時代、京の人々から「童」と呼ばれて蔑まれた主人公たちが、理不尽と戦う物語。登場人物それぞれの個性が際立ち、敵方も単なる悪人ではなく人間味が描かれている。立場が違えば正義も変わるというのは、いつの世も同じだ。平安時代の…

全文を読む

愚行録(貫井 徳郎)

自分の心を見透かされているかのような、心に刺さったガラスの破片のような作品だった。一家殺人事件をめぐって何人かのインタビューが進むのだが、それぞれの告白によって浮かび上がるのは、一家の様子だけでなく、告白者自身の内面でも…

全文を読む

熱帯(森見 登美彦)

エンターテインメントの哲学書と言えばいいのか、一言では表現が難しい作品だが、兎にも角にも面白かった。想像を創造することが物語であり、物語は人生であり、それ積み重なって千夜一夜物語が語り継がれるのかと思ったり……私の心は未…

全文を読む

宝島(真藤 順丈)

この物語を読んでなお沖縄に無関心でいられる人がいるのだろうか。「戦争をしないことにした日本の平和がアメリカの傘下に入ることで成立しているなら、その重要基地のほぼすべてを引き受ける地方が国政をつかさどるべきだとは思わないか…

全文を読む

未来(湊 かなえ)

それぞれが置かれた環境がとても過酷で、未来とは一体だれのためにあるのだろうと思いながら読み進めた。未来からの手紙以上に、たった一人でも信じられる人がいるかどうかが、未来への希望になるのかなと思う。辛いけれど先が気になって…

全文を読む

ビタミンF(重松 清)

40代を目前にしたアラフォーの男たちとその家族を描いた短編集は、この世代を過ごした男性への心の栄養となることはもちろんだが、多くの読者に穏やかな感動を与えてくれる物語だろう。色々あるが、頑張っていこういう気持ちになれる一…

全文を読む