カテゴリー: 直木三十五賞候補作

少年と犬(馳 星周)

飼い主を失ったと思われる多聞(たもん)という犬との出会いが、人々の心を隙間を埋めていく。東日本大震災によって仕事をなくした男、窃盗団の外国人など、各章ごとに問題を抱えた人間の視点から描かれる物語だが、主人公はあくまで犬で…

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銀花の蔵(遠田 潤子)

奈良の醤油蔵を受け継いでいく家族模様を描いた人間ドラマであり、蔵をめぐるある謎を紐解いていくミステリーでもある本作。様々な伏線が張り巡らされた綿密な構成が素晴らしく、それでいて登場人物たちの表裏両面の心も見事に描いている…

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じんかん(今村 翔吾)

松永久秀というと常に裏切り者というレッテルを貼られ、悪人の代表のようなイメージで描かれることが多い。極悪人とされる人間の心の内を想像しようとする人は少ない。本作品は、松永久秀という人の生き様をから、人間社会が向かうべき未…

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ふたご(藤崎 彩織)

SEKAI NO OWARI(セカオワ)というバンドがあることは知っていた。曲も聞いたことがあった。だけど、この本を読む前と読んだ後で、セカオワの印象はずいぶん変わった。この物語は、セカオワの話ではないけれど、セカオワの…

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彼方の友へ(伊吹 有喜)

明治から昭和中頃まで出版されていた少女の友(実業之日本社)という少女向け雑誌がある。この本は、この雑誌に関係した人々の思いが込められた素敵な物語である。 昭和十二年から昭和二十年という激動の時代、主人公のハツはこの雑誌作…

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若冲(澤田 瞳子)

江戸中期の人気画家・伊藤若冲の人生を描いた物語。若冲はなぜあのような奇抜な絵を描いたのか。懊悩の極みにあって、絵を描くことだけが生きる術だったのではないか。楽に生きていくことなどできず、死ぬこともできない自分。 前半から…

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スワン(呉 勝浩)

ショッピングモールでの無差別殺人事件に居合わせ、生き残ってしまった主人公らが、本当にそこで何があったのかを明らかにしていくミステリー作品。謎の招待状、個性的な人々、そして無責任で横暴な観客たちがスワンの世界を演出する。白…

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嘘と正典(小川 哲)

SFといえばSFかもしれないが、ブラックコメディの要素もあり、サイエンスそのもののような要素もある6編のエンターテインメント小説。どの作品を読んでも、その世界観は挑戦的で、答えはお前の後ろにあるぞと言われているかのような…

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熱源(川越 宗一)

舞台は明治から昭和にかけての樺太(サハリン)。そこで出会い、そこで生きる人々の声が聞こえてくる。アイヌ人、ポーランド人、日本人、ロシア人、あるいはオロッコなど、それぞれが尊重しあって生きていた場所は、本当の意味での「無知…

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