コロナ渦の今だからこそ読むべき作品である。 HAVIという技術によって老いることがなくなった人間。しかし、人が死ななくなると社会の新陳代謝が停滞するため、施術から百年後に強制的に死ぬことが求められる。見た目は若いが、超高…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
コロナ渦の今だからこそ読むべき作品である。 HAVIという技術によって老いることがなくなった人間。しかし、人が死ななくなると社会の新陳代謝が停滞するため、施術から百年後に強制的に死ぬことが求められる。見た目は若いが、超高…
まもなく人類は滅びる──そのニュースが報じられた翌日、虐められていた高校生の少年は、それでも何も変わらない現実を受け入れかけていた。死んでしまいたいと望んだのに、何もできない自分自身に失望しかけていた。しかし、彼には思い…
幸せになるにはどうしたらいいのだろう──正解のない問いをついしてしまう。そもそも幸せって何だろうと考えてみる。明確に答えられないことに焦る。そして、幸せそうな他人を羨み、そんな自分に嫌悪する。 親を理由に仕事を辞めたこと…
人生に躓いたとき、思い通りにならない時、次の一歩を踏み出すきっかけをくれたのは一冊の本だったかもしれない。しかし、そのきっかけを求める初めの一歩は自分で踏み出したものだ。その一歩がこの図書室に繋がり、少しだけ視点を変えて…
他の鯨には聞こえない声で歌う孤独な鯨がいるという。そのトーンは52ヘルツ。主人公のキナコは、誰にも聞こえない声を上げ続け、孤独の中で生きてきたのだが、やがてその声を聴いてくれる人が現れる。そして、同じように52ヘルツの声…
冷戦の時代、米国のCIAがソビエト連邦に立ち向かうために武器としたものに文学があった。ボリス・パステルナークの小説「ドクトル・ジバゴ」は、ロシア革命を批判しているとして言論統制化のソ連では出版されなかった。そこでCIAは…
なんという美しさだろうか。8×8の升の上、あるいは下には、逃れようのない耽美な切なさが、無限の宇宙のように広がっていた。 リトル・アヒョーキンと呼ばれるチェスプレイヤーは、ただ強いだけで伝説となったわけではなかった。彼の…
中国に密航して三十年後、日本に帰ってきた男は、失われた時間を取り戻すかのように日々を過ごす。かつての友、そして家族はどうしているのか、家はどうなったのか、そして日本はどのように変わり、世界はどのように変わったのか。 彼は…
長崎の五島列島にある中学校の生徒たちの、合唱コンクールへ向けた青春のひと時を描いた作品は、読んでいる間だけ自分の年齢を忘れてその頃に戻ったような気持ちになれる清涼感溢れる一冊だった。 産休に入る音楽教師の代理で学校に来た…
シューマンの文学的音楽、そしてその生き方が、現代を生きる若者を導く。その先にあるものは光なのか闇なのか。 里橋優の元に、鹿内堅一郎から驚くべき手紙が届いた。かつて天才と呼ばれたピアニスト・永嶺修人が、失ったはずの指を克服…