百年法(山田 宗樹)

コロナ渦の今だからこそ読むべき作品である。

HAVIという技術によって老いることがなくなった人間。しかし、人が死ななくなると社会の新陳代謝が停滞するため、施術から百年後に強制的に死ぬことが求められる。見た目は若いが、超高齢化社会を迎えた日本が抱える問題は、現在に本の姿にピタリと重なる。

新たな世代のためにどうしたらいいのかといった思考や、未来の社会のために何を残すのかといった思考よりも、自分自身の幸せをひたすら追い求めることが優先される社会。それはやがて、死をも拒否して生きたいという願望へと繋がっていく。

不老不死をテーマとする作品は小説でも漫画でも多数あるが、この物語は圧倒的なエンターテインメント性と、問題提起の的確さを併せ持った名作である。前半で綿密に張り巡らされた伏線が、後半になって次々と回収されていく様は見事としか言いようがなく、そのことは今を生きる我々の行動が未来を作るのだということの現れでもある。

終章にはまさに今考えるべきことが込められたメッセージがある。今この時、この本を読むことができてよかった。

個人的おすすめ度 4.5