メッセンジャーの仕事をしている男の心の内を刻々と綴る前半、そして突如シーンが変わってそこに至る過程と気づきが描かれる後半。どことなくニヒルな雰囲気もある主人公だが、その内にある抑えようのない衝動が彼の人生を導いていく。社…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
メッセンジャーの仕事をしている男の心の内を刻々と綴る前半、そして突如シーンが変わってそこに至る過程と気づきが描かれる後半。どことなくニヒルな雰囲気もある主人公だが、その内にある抑えようのない衝動が彼の人生を導いていく。社…
一つの作品が生まれ、人々の目に触れながら、絵もまた人々の変遷を見守っているかのようだ。一枚の絵に連なる人たちの変遷に胸が熱くなった。流れる涙は温かいもので、人を信じたいという気持ちにさせてくれる一冊だった。 オーストラリ…
正しい欲求とは何だろうか。異性を見て性的興奮を覚えることは正しい性欲なのだろうか。食欲は、睡眠欲は、正しい欲求なのだろうか。誰がそれを何のために規定するのだろうか。自分がマジョリティに属していると思う人間が、そうでない人…
「俺」がその一言を云えるようになるまでに、どれほどたくさんの時間を費やしてきたのだろう。誰にも気づかれない孤独の中で、真っ黒な胸の内を隠して、自分ではない何かを演じて生きていく人生の辛さよ。血を流しながら、死ぬこともでき…
学術研究で名を残す人の横には、名もなき多くの支えがあった。植物学者・牧野富太郎氏のことはこの作品で初めて知ったが、植物への圧倒的な熱量、絶対的な現場主義、純粋すぎるが故にそれ以外のことにはまったく気づかない鈍感さ、あくま…
ドイツで人気のミステリーシリーズの第二段。ヴァルナーとクロイトナーら刑事が、山の中で発生した殺人事件の犯人を追って活躍する。犯人と思わしき複数の人物は誰もが問題を抱えていて、それでも殺人まで犯すほどの動機はどこにあるのだ…
第二次世界大戦時、ソ連は女性を男性と同じように前線へ送った。この大戦の犠牲者数だけを見ても、ソ連は世界で突出している。多くの命が失われ、戻ってきた人たちも体と心に大きな傷を負っていた。戦線で活躍した男性は、帰還してから称…
戦国時代、石垣施工の技能集団・穴太衆。その中でも、石垣を築く技術を持った天才を人は塞王と呼んだ。穴太衆の若きリーダーとなった匡介は、絶対に破られない石垣を造れば、戦国の世を終わらせることができると考えていた。 一方、鉄砲…
同じ日は二度とない。同じ人生もない。普通ということも実はひとつもない。すべての人の人生が特別だ。そのことを意識する必要もないほどに。 十二編の物語は、遠くの誰かの物語のようで、すぐ隣の誰かのような気もする。私の人生は誰か…
学生運動が盛んだった時代だろうか。若者たちの悩み相談的な投稿に、逆説的な皮肉も込めて応える深沢七郎の言葉。著者の意見に納得したり、あるいは自分は違うなと思ったり、そうやって読み進めているうちに、ただただ純粋に生きようと思…