検事・佐方シリーズほど安心して読める法定ミステリーはない。平成版水戸黄門というか、正義の味方ウルトラマンというか、とにかく表現は古いけれど、それくらい安定的に面白い。 シリーズ全作を通じて、とにかくテーマは人である。この…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
検事・佐方シリーズほど安心して読める法定ミステリーはない。平成版水戸黄門というか、正義の味方ウルトラマンというか、とにかく表現は古いけれど、それくらい安定的に面白い。 シリーズ全作を通じて、とにかくテーマは人である。この…
検事・佐方シリーズは本当に心に響く。連作短編のそれぞれに正義の物語があり、人が最後に人として踏みとどまる瞬間を感じて涙が零れた。佐方が対するのは、被疑者Aではなく、名前のある一人の人間である。森を見るのではなく樹を見ると…
福祉保険事務所に勤める男が殺された。手足を縛られ、そのまま放置されたことによる餓死であった。なぜこんなにも惨い死を迎えることになったのか。その背後には、人を護るはずの社会保障制度が、人を切り捨てている現実があった。 子供…
待望のビブリアシリーズ、今回は一冊丸ごと横溝正史がテーマとなっていた。幻の作品「雪割草」、最高傑作のひとつである「獄門島」、そして直筆原稿の行方。ある家族の問題と、これらの作品がリンクして、古書を巡るミステリーが展開する…
障害者施設で手首をカットして病院に運ばれた少女は、本当に自殺だったのか。同じ施設に入所している青年は、少女の死を自殺ではないと訴える。臨床心理士の主人公が、青年の担当となってこの事件を調べていくと、障害者をめぐる社会の問…
検事を辞めて弁護士になった貞方は、あるホテルで起きた殺人事件の被告の弁護を引き受ける。一見、ただの男女の諍いのような事件だが、突き詰めていくとまったく異なる景色が見えてくる。 貞方は、罪はまっとうに裁かれるべきだという。…
これほど精巧に組み立てられたミステリーにはなかなか出会えない。様々な伏線がしっかり回収されていく王道の構成であり、かつ、二重構造の物語となっていて、一つの作品で二度楽しめるという構造になっている。 名探偵アティカス・ピュ…
ノース・カロライナ州の湿地で孤独に生きている女性カイア。経済的に厳しい環境下ではあっても、逞しく生きている彼女が見る湿地は、生命のエネルギーに溢れていた。しかし、湿地の少女と蔑まれた彼女は、この地で1969年に起こった殺…
警察学校は生半可な気持ちでは卒業できない。しかし、実際の現場に出てから命を削って仕事をしなければならない彼らにとって、ここでの学びは覚悟を決めるための時間でもあるのかもしれない。 警察官になろうとする一人ひとりにドラマが…
元弁護士の上水流涼子が、助手の貴山とともに、ありえない依頼を解決していくエンタメミステリー。柚月裕子さんの作品はバラエティに富んでいるが、すべてにおいて「人として正しくあること」が根底にある。この主人公からも、元弁護士で…