学生時代に読み漁っていた内田康夫の浅見光彦シリーズ。1988年に出版された作品だが、妻の故郷である江田島が舞台ということで、現地の地図などと照らし合わせながら読んだ。 江田島と言えば、かつて海軍のエリートを養成した海軍兵…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
学生時代に読み漁っていた内田康夫の浅見光彦シリーズ。1988年に出版された作品だが、妻の故郷である江田島が舞台ということで、現地の地図などと照らし合わせながら読んだ。 江田島と言えば、かつて海軍のエリートを養成した海軍兵…
表題作を含む8本の短編は、現代社会の問題を反映したファンタジー作品で、一編読み終えるごとにチクチクと見えない棘が刺さっていくような感覚があった。 家族の在り方を問う「母の法律」、監視社会をシニカルに描いた「戦闘員」、タイ…
男を殺してしまったと話した女性は、警察の取り調べに対して、女の声が聞こえるのだと言った。女性はなぜ男を殺そうとしたのか。そもそも男との関係はどのようなものなのか。そして、女の声とは一体何なのか。 事件は過去にさかのぼる。…
少女は大量のドーナツに囲まれて死んだ。彼女は、かつての同級生の娘らしい。美容整形外科医の橘久乃は、彼女の死の真相を求めて関係者に話を聞いていくが、そこには人々が抱えるコンプレックスの欠片(カケラ)が散らばっていた。 太っ…
小さな偶然が積み重なって引き起こされる大騒動。交差するはずのなかった25人と3匹の運命は、やがてホテル青龍飯店へ繋がっていく。倒れ続けるドミノのように、止まることなく物語はクライマックスへと向かう。 個性的すぎる登場人物…
千駄木の付近に流れていた心川(うらかわ)。その周囲に人々が住み着いて町となった心町(うらまち)。裏町を心町とするところが人情味のある場所を表している。人には言えない事情があってここに住むようになった人たちは、互いに適度な…
農林水産省を追われて証券関連の仕事をしていた古葉慶太は、1996年12月のある日、香港在住のイタリア人富豪から、断ることのできない依頼を受ける。古葉は、そのミッションを遂行するため香港へと渡るが、やがてそれが世界を巻き込…
鰻が食べたい──読み終えた第一声はそれだった。 鰻屋「まつむら」へやってくる女子たちの物語だが、5つの物語の中には常に典型的なダメ男の権藤祐一が出てくる。祐一と長く同棲している笑子、学生時代に祐一に告白して拒否された加寿…
福島県気仙沼の海岸で女性の遺体が発見された。女性が所有していた身分証明書には笘篠とあった。五年前に東日本大震災で津波にさらわれた笘篠の妻の名前である。刑事の笘篠は現地へ向かうが、そこで見たのは妻とは別人の遺体だった。 笘…
上野恩賜公園で生活するホームレスの高齢男性。福島県の相馬で昭和天皇と同じ日に生まれた彼は、家族のために出稼ぎで各地を転々とする。戦争を経験し、高度経済成長期を経て、日本の成長を支えた彼が行きついた先は上野だった。 故郷は…