合理的にあり得ない 上水流涼子の解明(柚月 裕子)

元弁護士の上水流涼子が、助手の貴山とともに、ありえない依頼を解決していくエンタメミステリー。柚月裕子さんの作品はバラエティに富んでいるが、すべてにおいて「人として正しくあること」が根底にある。この主人公からも、元弁護士でありながら、法律を犯しても人として超えてはいけないものがあるという信念が感じられる。

物語は5つの依頼から成り立っている連作短編であり、読み進めていくと彼女がなぜこの仕事を始めたのかといった背景が分かってくる。そして、頁を捲りながら、強さと美しさを兼ね備えた上水流涼子という人物に、著者の姿を見てしまう自分がいた。

問題解決への種明かしをしていく上水流と貴山は非常にかっこよく、シリーズ化してもらいたいのはもちろんのこと、映像化されたら誰が演じるんだろうなということさえ期待と共に妄想してしまう。

最後に一文字まで気持ちよく読むことが出来る痛快な作品だった。

個人的おすすめ度 3.5