香菜里屋を知っていますか(北森 鴻)

香菜里屋シリーズ完結編。
三軒茶屋のビアバー香菜里屋のマスター・工藤とこのお店の秘密が明らかになる本作。
連絡短編のミステリーだが、この一冊は、先のシリーズ三冊を読んでから読むことを強くお勧めしたい。
収録されている短編はいずれも甲乙つけがたい珠玉の品ばかりで、まるで工藤が作る手料理のようにミステリアスで芳醇な味わいがある。

この本には、著者の未完の作品「双獣記」も収録されている。
蘇我蝦夷や厩戸皇子(聖徳太子)らが登場する作品で、香菜里屋シリーズとはまったくことなるテイストの作品であり、著者の守備範囲の広さがわかる作品である。

残念なのは、これらの素晴らしい作品を残した著者がこの世にいないことだけである。

個人的おすすめ度 3.5