クスノキの番人(東野 圭吾)

ある神社にある巨大なきな楠(くすのき)には、祈念に訪れる人がいる。願い事が叶うと噂される神木だが、その本当の意味を知る者は限られている。主人公は詳しいことをしらないまま成り行きでその木の番人を任される。

この楠はどんなものなのか、そしてこの楠を訪れる人々を巡る物語はどうなっていくのか、そのことを紐解いていく優しいミステリーである。何かがあると他人のせいにして生きてきた主人公が、番人の仕事をしていくなかで少しずつ成長していく。神秘的なことはただのきっかけに過ぎず、大切なことはきちんと生きる姿勢なのだろう。

人として大切なものは何かという普遍的なテーマを、こうもさらさらとわかりやすく表現できてしまう東野作品はやはり凄い。読後感もよく、穏やかな気持ちで安心して読むことが出来る物語であった。

個人的おすすめ度 3.5