三体 III 死神永生(劉 慈欣)

人類が他の知的生命体とどう対していくのか、地球あるいは太陽系にはどのような未来が待っているのか、想像を超える結末を迎える三体の完結編。宇宙は自らの存在を知られることで滅亡の危機に瀕するという暗黒森林の状態にある。その中で、三体文明とどう対峙していくかを問われる人類の行く末が描かれる。

本作品では、全人類の運命のカギを握る一人の女性・程心(チョウシン)を中心に物語が展開していくが、一つの決断が人類の運命を左右する。しかし、それは長い宇宙の歴史からしたら、さざ波にすらならない瞬間の出来事でしかないかもしれない。読めば読むほど結末が全く想像できず、舞台は太陽系から宇宙へと広がっていく。そして、宇宙の起源や結末にまで話が及んでいく。

三体シリーズを読んでいると、自分が考えていることは本当に狭い世界のことだと思い知らされる。できるだけ脳を柔らかくして読んでいるつもりでも、そのさらに外側に物語が展開していく。それによって新たな想像力を養うこともできるように感じた。

このシリーズを読むためには、従来の固定概念を捨てる必要があるかもしれない。あるいは、読み終えたときに狭い固定概念は崩壊しているかもしれないが、その快感を味わうことができるかどうかがこの作品をよむ価値ではないかと思う。

個人的おすすめ度 4.0