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黒牢城(米澤 穂信) – まったくの拓の読書備忘録

黒牢城(米澤 穂信)

荒木村重は有岡城にて織田信長に反旗を翻した。物語は有岡城で起こる事件の謎を突き詰めていく戦国ミステリーだが、憂き世の切なさが溢れる世界が現代社会にも重なって見えた。

秀吉の使者として有岡城に遣わされた黒田官兵衛を、村重は土牢に監禁する。戦国の世の習いに従えば、使者を切り捨てるのが常道であったが、村重はなぜ官兵衛を生かしたのか。物語はまずひとつの疑問を投げかけ、そこからいくつかの事件が続くことになる。史実に沿って展開する物語の中で、ミステリーとして展開する物語の巧みさに翻弄される心地よさがある。

読者としては、有岡城が陥落した歴史的な事実を知っている。やがて最期を迎えるこの城にあって、そこに生きた人々が何を求め、何と闘い、どこに到達したのかということもまたこの物語の大きな見どころである。物理的な側面からの謎の解明だけでなく、人の心を想像することの大切さはいつの世も変わらない。

人が生きる理由こそが人類最大のミステリーかもしれないと思った一冊である。

個人的おすすめ度 4.5