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暴虎の牙(柚月 裕子) – まったくの拓の読書備忘録

暴虎の牙(柚月 裕子)

広島を舞台に、刑事と極道の世界を描いた孤狼の血シリーズの完結編も、期待を裏切らない面白さだった。極道を恐れない沖をリーダーとする愚連隊と、マル暴刑事の大上(ガミさん)の関係を描いた前半は、沖らの人間的な部分が丁寧に描かれていて、彼らが単なるチンピラではないことを窺わせる。一方、一見不遜に見える大上の態度は、人間味に溢れていてとても魅力的である。

後半は、大上亡き後の日岡と、沖らの対決が描かれる。そこにいた沖は、何かが変わっていた。それは、大上と出会った頃から始まっていた変化だったように思う。大上の沖に対する思いは伝わったのだろうか。

生身の人間同士の衝突が描かれるこのシリーズは、まさに男の世界という感じの物語で、一人一人が背負っている運命が悲しくて切ない。この結末も避けようがなかったものだったのかもしれない。

完結編とのことだが、まだまだ続きが読みたくなるシリーズである。

個人的おすすめ度 4.0