渚にて 人類最後の日(ネヴィル・シュート)

1957年に書かれた同書の完全新訳版だが、まったく色あせないどころか、むしろ現実味を帯びているとさえ感じる人類の最後が描かれている。
第三次世界大戦で無数の核兵器が使用され、北半球は全滅、南半球にも放射能による汚染が広がっていく。
オーストラリアのメルボルンで、最後を迎えつつある人々の様子が淡々と語られる。

誰もがいつか死ぬというのは、今のところ間違いないことだ。
死期を悟った人間が、そのときまでどう生きるかということもこの作品の大きなテーマであろう。
戦争の虚しさもさることながら、それ以上に尊厳死というものも考えさせられる。

人間の一生など、宇宙から見れば取るに足らないものだ。
だからこそ、そのわずかな一瞬を無駄にしないように生きたいと思う。
そして、この物語がフィクションのままであってくれることを心から願う。

個人的おすすめ度 4.5