兇人邸の殺人(今村 昌弘)

シリーズ第三弾の本格ミステリー。謎解きの面白さを味わいつつ、これは物語であり、エンターテインメントだと理解しながらも、物語に引きずり込まれるような面白さがあった。ファンタジー映画を見ているような感覚もあり、個人的にシリーズの中で一番好きな作品となった。

毎回、クローズド・サークルの謎解きが展開されるシリーズで、今回も期待通りの展開が待っていた。大学のミステリ愛好会会長である葉村譲は、今回もまた剣崎比留子とともに事件の只中に入っていく。そこは廃墟を売りにしたテーマパークで、班目機関と関連した研究が行われているという。その研究成果を求める集団とともに、葉村と剣崎はテーマパーク内の兇人邸と呼ばれる建物へと侵入するのだが、そこには驚くべき殺人鬼が住んでいた。

殺人事件もののミステリーは、物理的な部分の謎解きとともに、なぜ人が殺されるのかという動機への共感度合も大切な要素だと思う。このシリーズは毎回奇想天外な設定でありながら、なるほどと思わせる動機の設定も見どころである。

ラストシーンを読む限り、まだまだ続いていくのだろうと期待させてくれるシリーズである。自作も待ち遠しい。

個人的おすすめ度 4.0